Exhibition at Mori tower 52F TokyoCity View Sep30-Oct20 2025
CHANEL presents la Galerie du 19M Toyo

Founded by CHANEL in Paris, le19M is a unique initiative that brings together artisans and experts in fashion and decoration. Through dialogue with Japanese and French creators, it will present the exhibition “la Galerie du 19M Tokyo,” an exhibition that celebrates the richness of both heritage and showcases the artisans’ unique skills.
Conceived as a space of wonder, surprise, and dialogue, la Galerie du 19M Tokyo offers a free inspiring and playful journey open to all, in three chapters:
le Festival, a monumental installation introducing the unique savoir-faire of le19M’s Maisons d’art, designed by ATTA agency, led by renowned architect Tsuyoshi Tane.
Beyond Our Horizons, an immersive exhibition gathering creations by close to 30 Japanese and French artisans and artists curated by five creative figures with CHANEL and le19M: Momoko Ando, Yoichi Nishio, Shinichiro Ogata, Kayo Tokuda and Aska Yamashita.
Lesage. 100 years of Fashion and Decoration, a retrospective for the 100th anniversary of the embroidery and weaving House, unveiling its most impressive creations.
In le Rendez-vous, a symbolic communal space created by sukiya (Japanese noble wooden architecture) craftspeople in collaboration with the artisans of le19M, visitors can experience exceptional craftsmanship up close, accompanied by sound installation produced exclusively for this exhibition. All visitors are welcome to enjoy le Rendez-vous; however, entry into the installation requires a numbered tickets.
Visitors with reservations are invited to join charm-making workshops, an opportunity to discover the joy of craftsmanship firsthand. In addition, special series of talks will be held throughout the exhibition period, welcoming Editorial Committee members, artisans, and artists to explore dialogues on Japanese and French craftsmanship.
Immerse yourself in the world of contemporary artisanship—where curiosity meets creativity in a delightfully engaging setting.
Tokyo City View & Mori Arts Center Gallery (52F, Roppongi Hills Mori Tower)
VOGUE Japan
ヘア&ウィッグアーティストの河野富広とフォトグラファー/ビジュアルアーティストの丸山サヤカが主宰するクリエイティブ・プラットフォーム「konomad」。国内外のブランドや百貨店などのプロジェクトを手がける傍ら、精力的に作品集刊行や展示開催を行い、常にものづくりを起点とした新たなヴィジュアル表現を試みている。9月30日より六本木ヒルズ森タワー52階で開催される、シャネル(CHANEL)による企画展『la Galerie du 19M Tokyo』。le19Mは、シャネルによってパリに設立された、ファッションとインテリアを極めた約700人の職人や専門家が集結する、ユニークな複合施設である。本展では、「konomad」が選んだ4つのアトリエ──ATELIER MONTEX(刺繍)、GOOSSENS(金細工)、LEMARIE(羽根・花細工)、MAISON MICHEL(帽子)──の職人たちとのコラボレーションによる新作が発表される。実際にle19Mに訪れ、職人のクラフツマンシップから刺激を受けたという制作の裏側から、未来のものづくりや表現の可能性について語ってもらった。
——フランスと日本という物理的な距離があったと思いますが、どのようなプロセスで形にしていきましたか?
まず、企画の焦点がシャネルを支える職人たちのアトリエにあることに強く惹かれました。技巧的で繊細な作品でありながらも、自由な発想や遊び心とクラフト(手仕事)の魅力が伝わるデザインを目指していきました。具体的なプロセスとしては、アイデアを落とし込んだデザインスケッチをアトリエに送ったのち、各アトリエが仕上げた作品を最大限に活かすことを考えながら、今回のコラボでしか生まれないウィッグを制作しました。遠隔でのやり取りでしたが、事前に職人たちと(パリで)対面できた体験は、大きなモチベーションにつながりました。彼らの高度なクオリティに触れ、私たちの作品についても話したことで、互いにリスペクトを持って制作が始められたと思います。
——職人の方々と言葉を重ねる中で、印象に残ったエピソードはありますか?
たくさんありますが、特に心に残っているのは「We can do anything.(何でもできる・よりよく魅せることができる)」という言葉。職人として、プロフェッショナルとしての誇りを強く感じました。また、どのアトリエにも共通して、熱意あるクリエイションへの姿勢と情熱があって、そうした想いは、ディティールに対する驚異的なこだわりにも表れています。一つのアトリエを取っても、幅広い素材を日々扱っている環境にも刺激を受けました。例えば、刺繍を担う「MONTEX」のアトリエには、ビーズや糸、スタッズが数えきれないほど揃っていて。素材選びや組み合わせは職人にお任せしていたのですが、仕上がったものを目にした瞬間、「これしかない」と思えるセンスに圧倒されました。
——フランスと日本、それぞれの職人文化に触れて、共通点や違いを感じた部分はありましたか?
それぞれの歴史と文化を背景によって当然作り出すものも異なってくるので、ひとくくりに一般論として語るのは難しいですね。ただ、職人によってカルチャーが受け継がれ、続いていくこと、そしてそれぞれの技に誇りを持って活動している姿勢は同じです。強いて違うところを挙げるなら、アトリエの環境と食事と空気感でしょうか。パリはパリらしい、日本は日本らしい作業場だと思います。
——今回のコラボレーションを通して、制作プロセスに変化は生まれましたか?
普段のパーソナルワークでは、素材を触りながら直感的に手を動かし、クライアントワークではテーマをもとに形を考えていくのですが、今回のコラボレーションでは職人との対話を通して、次々とアイデアが生まれる新たなプロセスを感じられました。それは、やはり作品全体のクオリティを高める職人技があってこそのこと。当初の想像を超えるデザインへと進化していく体験は、刺激的で純粋に楽しかったです。
——展示する作品について、それぞれコンセプトを教えてください。
11つのアトリエがある中で、4つの職人技とコラボレーションしました。ポップなモチーフから、日本らしいコンセプト、ファンタジーな雰囲気までさまざまな世界観を一つの作品それぞれに凝縮して表現できたと思います。いずれもヴィジュアルとして一目でインパクトを感じられる、それぞれのアトリエの強みが伝わるようなデザインに仕上げました。
——Konomadが大切にしている「手の記憶」や「素材との対話」という感覚は、職人技と融合することでどのように発展していきましたか?
髪の毛は、ものづくりに用いられることはあまりなく、扱いづらい素材でもあります。ですが、今回それぞれのアトリエが扱う羽根や金属、ビーズ、フェルト生地の帽子など多様な素材との組み合わせによって、想像を超える表現に出会うことができて。改めて、素材との対話を通した手仕事の楽しさを実感できました。クリエイションの可能性は、無限大になるんだなと。また「手の記憶」として、これまで以上に毛を繊細に植えたり、バランスで遊んだりと、繊細で柔軟な手の動きが求められました。その過程の中で、素材の特徴に対して、より深く向き合う感覚が強まりました。今回のコラボレーションを通して、素材との対話の幅が広がり、表現の自由度が一段と増したように感じます。今後、また同じような機会があれば、他のアトリエとも協業し、さまざまな角度からの刺激を受けた作品をつくってみたいです。
——ヘアという動的な表現と、刺繍や金細工といった静的なクラフト。両者に共通する潜在的な美しさは、どこにあると思いますか?
「髪(ヘア)」という素材自体は朽ちにくい性質ですが、「髪型(ヘアスタイル)」は、一瞬で崩れ去る刹那的な美を内包しています。その儚さゆえに、作品としては比較的保存しにくいものかもしれません。一方で金細工や刺繍は形を保ち、時を超えて残り続けることで永遠性を象徴します。ウィッグは、その両極の性質を併せ持つ存在だと思います。時間をかけて丹念に積み重ねられた手仕事の痕跡がそこに残り、鑑賞者に制作のプロセスを想起させる力があります。この「手の痕跡」は、刺繍や金細工にも共通しているのではないでしょうか。繊細な作業の積み重ねによって、作品から独特の生命感が溢れ出す。それは単に形の美しさを超えて、鑑賞者の想像力を強く掻きたてる――時間や人の営みを感じさせる美しさだと感じます。
——今回のコラボレーションも、そうした手仕事ならではの価値を継承する一環を担うものだと思います。改めて、ものづくりの未来についてどのような可能性を感じていますか?
3Dスキャンやデジタルプリントの技術の発展により、簡単に精巧なものが再現できる時代になりました。その利便性や可能性は素晴らしく、楽しみである一方で、私(河野)はあえてアナログに徹する道を選びたいです。そう思えるのも百年前に先人たちが手で生み出したものが、いまもなお、人々の心に深い感動を与えているから。だからこそ未来に残っていくのは、やはり人の手からしか生まれない温もりや魂が宿った作品だと信じ続けられます。そうした温度や質感が、これから先も受け継がれ、未来のものづくりの中で息づくことの大切さを今回のプロジェクトを通してより一層強く感じました。
Photos: Courtesy of Chanel, Konomad
Text: Yoshiko Kurata Editor: Saori Yoshida